最終更新日:2008/ 4/ 5(土) 18:09:23
論文「米田実の対米認識」
書誌情報
- 名称:
- 米田実の対米認識
- 種別:
- 論文(単行本に収録されたもの)
- 単著/共著の別:
- 共著(共著者:杉山肇・東北公益文科大学教授)
- 収録書籍:
- 長谷川雄一編著『大正期日本のアメリカ認識』慶応義塾大学出版会
- 発行年月:
- 2001年5月
- ISBN:
- 9784766408546
- ページ数:
- 175―215頁(41頁)
概要
1.論文の要旨
米田実(まいだ・みのる)は、明治の末から昭和戦中期にかけて活躍したジャーナリストであり、外交史学者・国際法学者でもあつた人物である。一八七八(明治十一)年、福岡県に生れた彼は、日清戦争の翌年、アメリカに渡つてオレゴン大学やカリフォルニア大学大学院などで教育を受けてゐる。帰国してからは東京朝日新聞の論説委員長や、明治大学の教授を務め、国際問題評論家としても著名な人物であつた。
米田実がアメリカで過したのは、一八九六年から一九〇七年までのことである。彼の対米認識の基礎は、この時期に築かれたと思はれるが、当時の彼の言説については資料に乏しく、はつきりとしたことは判らない。そこで、帰国後に発表した論稿を通じて彼の対米認識を探ることにしたい。
まづ「排日移民問題」に対してであるが、現地の邦字新聞で編集長を務め、排日運動を身を以て体験した彼は、この問題についての詳細な情報を持合せてゐた。また、大学ではアメリカ政治史や国際法などを研究してをり、学術的な知識も豊富であつた。そのため彼の論稿には、現地での研鑚と自己の経験から得た、厖大な情報が盛込まれてをり、読む者を圧倒する。しかもその議論は、徳富蘇峰などと比較してみると、きはめて冷静かつ実際的であり、決して感情に流されてゐない。彼は常に、米国を「長所もあれば短所もある、ごく普通の国」とみなしており、決してこれを過度に讃美したり、過剰に敵視したりすることがなかつた。
このやうな彼の姿勢は、米国の外交や内政について評価する場合も同じである。また、国際連盟やワシントン体制といつた、さまざまな国の利害が錯綜する問題を取り上げる場合にも、彼は冷静な態度を失はなかつた。彼は常に、理想に流されることもなく、逆に現実を過度にシニカルに眺めることもなかつた。その特徴は、蘇峰や吉野作造の議論と比較してみると、より明瞭になつてくる。
一九二四年に、有名な「排日移民法」が成立し、国内で反米の気運が高まつたときも、米田は冷静であつた。彼は巷間で取沙汰された対米開戦の主張を「大人げもなく皮相的」と切捨ててをり、依然として日米妥協の可能性を探り続けてゐる。このやうな態度は、同じく知米派のジャーナリストであつた、清澤洌のそれと共通するものがあつた。
米田は、つねに日米の親善を主張しつづけ、その可能性を探り続けた。彼の議論を、在米時代からの親友であつた松岡洋右が聞いたとしたら、おそらく一笑に付したうへで、「譲るべき理由もないのに屈辱的な譲歩を示せば、日本は今後、ますます軽侮される羽目になる」と反論したであらう。しかし、それでも米田は、「われわれは争ひを避けたいのだ…日米両国の親善は、太平洋全体の平和のためにも大切なことなのだ」との立場を、決して崩さうとしなかつたのだつた。
2.論文の目次
- 一 一六歳、ある少年の夢の軌跡
- 二 実体験による米国像の描出
- (一)言論人としての自己規定
- (二)排日移民問題
- (三)米国の内政と外交
- 三 国際問題に対する言説の展開
- (一)第一次世界大戦と対華二一ヶ条
- (二)パリ講和会議と国際連盟の成立
- (三)ワシントン会議
- (四)排日移民法の成立
- 四 をはりに
正誤表・補足情報
いまのところ誤記や誤植は見つかつてゐません。なにかお気づきの点がありましたら、ご一報いただけると幸です。
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全文データ
本論は共著論文といふこともあり、当面、こちらで全文データを公開する予定はありません。上記の図書館にて紙媒体をご利用下さい。
参考文献リスト
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