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最終更新日:2008/ 6/15(日) 11:20:38

論文「明治前期における日本の国家間賠償」

目次

  1. 書誌情報
  2. 概要
  3. 正誤表・補足情報
  4. 入手・閲覧方法
  5. 全文データ
  6. 参考文献リスト
  7. 関連リンク

書誌情報

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概要

1.論文の要旨

(1)※『レファレンス』563号pp.3-4より一部改変して転載

国家間賠償といふ言葉は一般に、講和に際して戦勝国が獲得する金銭を連想させる。しかし歴史的にみるとこの言葉の用法は、そのやうに狭く限定されたものではなかつた。

幕末から日清戦争の前までに、日本が賠償を支払つた一五の事例を見てみると、たしかに武力紛争のあとに金銭を支払つた例はある(たとへば下関砲撃事件)。しかし一方で、外国武器商人の損害を明治政府が補填した「スネル事件」のやうな、紛争を政治的に解決するための賠償の例や、攘夷浪人がイギリス公使館を襲撃した「東禅寺事件」のあと支払はれたやうな、国際違法行為による損害を填補するための賠償の例も、数多く存在してゐる。

日本が賠償の受領国となつた場合(八事例)でも、台湾出兵のやうな、武力紛争の結果としての賠償の例がある一方、政府が在外邦人を保護する過程で相手国から金銭を受けとつた「朝鮮人参没収事件」や、領土の授受に際し、そこに存在する日本政府の公有財産の対価を賠償として受け取つた「樺太千島交換条約」の例もある。

このやうに当時、国家間賠償の概念は内容的にみて、きはめて多岐にわたつてゐた。しかしこれらの事例は大きく分けて、次の四種類(五類型)に整理することができる。

  1. 国際違法行為に対する法的義務の履行としての損害の補填のうち、直接の被害者が国家であるもの
  2. 国際違法行為に対する法的義務の履行としての損害の補填のうち、直接の被害者が私人であるもの
  3. 紛争の政治的解決のための金銭の給付
  4. 戦費賠償
  5. 領土等の授受に伴ふ金銭の給付

本稿の前半(本号掲載)では、具体的諸事例の紹介をおこなふ。すなはち第一章で、日本が賠償の支払国となつた一五の事例を紹介し、つづく第二章で、賠償受領国となつた八つの事例をとりあげる。

(2)※『レファレンス』564号pp.9-10より一部改変して転載

本号ではまづ、具体的な賠償には至らなかつたものの、注目に値すると考へられる一〇の事例を紹介する(第三章)。すなはち日本が初めて国際裁判の当事国となつた「マリア・ルス号事件」や、ロシア皇太子を日本の警察官が傷つけた「大津事件」などである。

第四章では、これらの「国家間賠償」の諸事例の理論的な整理を試みる。これらの事例は、その内容においてきはめて多様であるが、大きく分けて次の四種類(五類型)に整理することができる。

第一は、何らかの国際違法行為を契機とする賠償で、英国公使館が襲撃を受けた、いはゆる東禅寺事件に対する賠償などが、これにあたる。この種の賠償は、その直接の被害者が国家そのものであるか否かにより、さらに第一類型・第二類型に分けられる。

次に、紛争を政治的に解決するための金銭の給付(第三類型)が挙げられる。スネル事件での賠償(外国武器商人の損害を明治政府が補填したもの)などが、これに該当する。この種の賠償は、支払国に国際違法行為があつたかどうかを問題にしないことが特徴である。

第三番目は、いはゆる戦費賠償(第四類型)である。下関砲撃事件での賠償などはここに属する。この種類の賠償も、国際違法行為を契機としないが、武力紛争の解決時にのみ支払はれるといふ点で特徴的である。

最後は、領土等の授受に伴ふ金銭の給付を賠償と呼んだもの(第五類型)で、樺太千島交換条約における賠償などがこれにあたる。賠償概念としては、他の諸類型と比較して周縁的な位置にあると考へられる。

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2.論文の目次

(1)

(2)

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正誤表・補足情報

(2)の135ページ下段・註(13)の3行目:(誤)プロシア皇孫→(正)ドイツ皇孫

※他にお気づきの点がありましたら、ご一報いただけると幸です。

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入手・閲覧方法

次項「全文データ」から、PDFファイルを閲覧・印刷できます。また紙媒体については、各地の図書館(大学図書館・公共図書館)で閲覧できます。下記のリンク先から検索してみてください。

全文データ

本稿は私が、国立国会図書館調査立法考査局における職務の一環として、国会審議の参考に供するために執筆したものです。国立国会図書館の許諾を受けこちらに転載しますが、著作権は同館に帰属します。無断転載・複製による第三者への配布・内容の改変を禁じます。

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参考文献リスト

(現在作成中です)

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