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最終更新日:2008/ 6/15(日) 11:19:35

論文「明治後期における日本の国家間賠償」

目次

  1. 書誌情報
  2. 概要
  3. 正誤表・補足情報
  4. 入手・閲覧方法
  5. 全文データ
  6. 参考文献リスト
  7. 関連リンク

書誌情報

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概要

1.論文の要旨

(1)※『レファレンス』574号pp.4-5より一部改変して転載

本稿は、筆者が先に本誌五六三号および四号において発表した「明治前期における日本の国家間賠償」の続編にあたる。その目的は、日清戦争から明治末までの間(明治後期)に、日本が関係した国家間賠償の諸事例を紹介するとともに、その特徴について考察することである。

明治前期と同様、明治後期においても日本は、さまざまな事件を契機として諸国と賠償金の授受をおこなつた。このうち日本が受領国となつた事例としては、たとへば日清戦争や北清事変(義和団事件)における軍費賠償がある。またハワイにおいて、日本からの移民の入国が拒絶される事件が起ると、日本はハワイ政府に賠償を請求し、一五万円を受取つた。さらに清国とカナダで排日暴動が起きた際にも、日本は両国から賠償金を受領してゐる。

一方、日本が賠償支払国となつた事例も存在する。たとへば日露戦争中に、日本の軍艦が国際法に違反して英国汽船を拿捕したことに対し、賠償金を支払つた「イーストリー号」事件などである。本稿ではまづ、これら実際に賠償がなされた事例(二三例)を紹介することとする。

(2)※『レファレンス』575号pp.7-9より一部改変して転載

本号ではまづ、賠償の合意には至らなかつたものの、交渉の過程でそれが解決条件として提起されるなど、注意を要する事例を七例とりあげる(第二章)。日本の巡洋艦が、日清戦争の冒頭に英国汽船を撃沈した「高陞号事件」や、日清戦争で、朝鮮が受けた被害を補填するとの名目で計画されたものの、結局実現には至らなかつた「朝鮮への寄贈金一件」などがここで紹介される。

続いて第三章において、金銭の授受はあつたものの、国家間賠償とはいひがたい事例を五例、参考事例として紹介する。ここでとりあげるのは、たとへば「ハワイ防疫焼却事件」のやうに、在留邦人が居留国の国内司法手続により賠償を獲得した事例である。また米西戦争のきつかけとなつたことでも有名な、米国戦艦メイン号の爆沈事件に際して、たまたま同艦に乗り組んでゐた日本人乗員にたいして、米国政府から手当金が支払はれた件なども、ここで紹介する。

第四章では、これら明治後期の諸事例のなかに見出される特徴について考察する。まづ、筆者が前稿「明治前期における日本の国家間賠償(二)」(本誌五六四号)において提示した「賠償の五類型」、すなわち

  1. 国際違法行為に対する法的義務の履行としての損害の補填のうち、直接の被害者が国家であるもの
  2. 国際違法行為に対する法的義務の履行としての損害の補填のうち、直接の被害者が私人であるもの
  3. 紛争の政治的解決のための金銭の給付
  4. 戦費賠償
  5. 領土等の授受に伴ふ金銭の給付

といふ国家間賠償の五つのパターンによつて、明治後期の諸事例の整理も可能であるといふ点を確認する。

続いて当時の国家間賠償の特徴を、明治前期の諸事例と比較しながら明かにする。具体的には、明治後期の諸事例には「賠償支払国となる事例の減少」「第四類型の事例における賠償金額の増大」「国内事件を契機とする賠償事例の減少」「賠償事例の発生場所の多様化」といつた特徴があることを確認する。

さらにこのやうな変化の背景として、日本人の海外への進出、国内治安の改善、日本政府の国際法の習熟、国際社会における日本の相対的な「地位」の変化、などが考へられることを指摘する。

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2.論文の目次

(1)

(2)

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正誤表・補足情報

(1)の註(59)「金毘羅丸事件」に関する記述の訂正(55頁)

この部分については、本稿発表後、典拠資料(『日本外交文書』)に誤りが発見されたため、別稿「大正期における日本の国家間賠償(1)」の末尾(64頁)に、訂正文を掲載しました。 その全文を以下に転載します(転載にあたり、圏点や仮名遣などを修正しました)。

筆者は、さきに本誌五七四号に発表した「明治後期における日本の国家間賠償(一)」において、「金毘羅丸事件」について言及した(五五頁)。そのさい、日本がロシアから四一〇〇円を受取る一方で、日本もまたロシア側に、一万六二四〇円を賠償したと記述した。この「日本による賠償」について、根拠としたのは『日本外交文書』第四四巻一冊、文書三三〇の註記である。その原文は左の通り。

註 金毘羅丸ハ明治三十九年七月露艦ノ為不法臨検ノ上猟具ヲ没収セラレタルモノニシテ日本政府ハ露国政府ニ対シ一万六千二百四十円ノ損害賠償ヲ為シ居リタリ

しかるにその後、外務省政務局第三課(田中文一郎稿)『日露交渉史』外務省、一九四四年(原書房より覆刻版、一九六九年)を参照したところ、そこでは日本側がロシア政府に対して同額を請求したことになつてゐる(下巻、二一二頁)。その原文は左の通り。

明治四十二年一月十九日小村外務大臣ハ落合代理大使ニ対シ[……]押収猟銃代千二百四十円及銃器没収ノ為猟獲不能トナリシ損害一万五千円ノ補償ヲ求ムヘキヲ訓令セリ

そこで今回、あらためて原史料(外務省外交史料館所蔵記録3.5.8.122「遠洋漁猟帆船三重丸密猟嫌疑トシテ露国巡邏船抑留一件」全三巻)を調べ直したところ、『日露交渉史』の記述の方が正しいことが判明した。

よつてここに、前稿の記述を「日本政府はロシア側に一万六二四〇円の賠償を請求し、四一〇〇円を受領した」と訂正することにしたい。右の『日本外交文書』の註記(同書編纂に際して付けられたもの)は、「損害要償」と書くべきところを、誤つて「損害賠償」としてしまつたものと考へられる。

なほ、この点に関連して、『日本外交文書』同巻同冊、文書三三四の附記にも注意されたい。この附記は、前掲「遠洋漁猟帆船三重丸密猟嫌疑トシテ露国巡邏船抑留一件」第三巻に収録された文書を、活字に起したものであるが、こちらも原文では「金毘羅丸ノ爲壹萬六千貳百四十圓ノ損害要償ヲナシタル」と書かれてゐる部分が、活字化の際に誤つて、「金毘羅丸ノ爲壹萬六千貳百四十圓ノ損害賠償ヲナシタル」と書換へられてゐる。

※他にお気づきの点がありましたら、ご一報いただけると幸です。

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入手・閲覧方法

次項「全文データ」から、PDFファイルを閲覧・印刷できます。また紙媒体については、各地の図書館(大学図書館・公共図書館)で閲覧できます。下記のリンク先から検索してみてください。

全文データ

本稿は私が、国立国会図書館調査立法考査局における職務の一環として、国会審議の参考に供するために執筆したものです。国立国会図書館の許諾を受けこちらに転載しますが、著作権は同館に帰属します。無断転載・複製による第三者への配布・内容の改変を禁じます。

  1. 画像版 (PDF形式) (1)(2) /原誌をスキャンし、透明テキストつきPDFに変換したもの。再構成版に比べると検索の精度が低くなりますが、引用は必ずこちらに拠つて下さい。
  2. 再構成版(現代仮名遣い・新字体) (PDF形式) (1)・(2) /Adobe InDesignCS2で組版し直したもの。全文検索はこちらを使つて下さい。
  3. 再構成版(歴史的仮名遣・旧字体) (PDF形式) (1)・(2) /上記の歴史的仮名遣・旧字体版です。

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参考文献リスト

(現在作成中です)

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