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最終更新日:2008/ 6/15(日) 11:21:09

論文「大正期における日本の国家間賠償」

目次

  1. 書誌情報
  2. 概要
  3. 正誤表・補足情報
  4. 入手・閲覧方法
  5. 全文データ
  6. 参考文献リスト
  7. 関連リンク

書誌情報

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概要

1.論文の要旨

(1)※『レファレンス』582号pp.5-6より一部改変して転載

本稿は、筆者が昨年本誌に発表した「明治後期における日本の国家間賠償」の続編にあたる。その目的は、大正期の日本が経験した国家間賠償の諸事例を概観し、その特徴を分析することである。

当時の日本が関係した国家間賠償の問題として、まづ最初に想起されるのは、第一次世界大戦のあとに締結されたヴェルサイユ条約に基くドイツのそれである。しかし、この時期の外交文書を詳しく検討すると、大正期日本の賠償事例の大半は、中華民国との間で実施されてゐたことが明かになる。

この時期、中国では対華二一か条要求や五・四運動などを契機として、大規模な排日運動が数回発生した。このときに、暴徒が在留邦人を殺害したり、日本商店を掠奪したりする事件が各地で頻発する。これらの被害に対して日本政府は、中国政府の責任を追及し、賠償を要求したのであつた。また一九一三(大正二)年の第二革命の際にも、これに類する被害が発生してゐる(南京事件)が、やはり日中間で賠償の授受がなされてゐる。

一方、第一次世界大戦についてみても、日本に賠償金を支払ったのはドイツだけではない。ドイツに与して大戦に参加したブルガリアもまた、講和条約の規定により、連合国に対して総額二二億五〇〇〇万金フラン(約八億七〇〇〇万円)の賠償金を支払ふことが義務づけられ、日本もその〇・三七五パーセントを受取ることになつてゐた(実際、一九二七年の時点でおよそ三六万八〇〇〇円を受領してゐる)。

そのほかシベリア出兵の際に、ウラジオストックに寄港してゐた米国軍艦の機関長が日本兵に射殺された「ラングドン事件」、吉林省鄭家屯で日中両軍の部隊が衝突した「鄭家屯事件」など、大正時代を通じて『日本外交文書』などで確認できる分だけでも、三〇件近い賠償事件が発生してゐる。本稿では、これらの事例を順次取上げ、その経緯や、賠償の名義について検討する。

(2)※『レファレンス』583号pp.4-5より一部改変して転載

本稿はまづ、賠償の合意には至らなかつたものの、当時の賠償の特徴を考へるうへで重要と思はれる事例を一六例とりあげる。たとへば、シベリア出兵のさなかに発生した「ニコラエフスク事件」などである(第二章)。

続く第三章では、金銭の授受はあったものの、国家間賠償とは認めがたい事例として、「榊原農場問題」や「雲陽丸事件」など四例を取上げる。これらは概ね、日本人と外国人の間で金銭のやりとりがあり、外務当局もこれを側面から援助したものの、国家間の賠償とは認めがたい事例である。

第四章では、これらの大正時代の諸事例について、その特徴を明治時代のそれと比較しつつ検討する。筆者がかつて提示した「賠償の五類型」は、大正期の事例を分析する際にも有効と考へられるが、その一方で、第五類型が消滅するなどの変化も、いくつか確認される。

また、地域および相手国からみるならば、当時の国家間賠償は、そのほとんどが中国大陸で発生した事件を契機として行はれてゐる(当然、その相手国も中国であることが多かつた)。さらに当時の賠償において、われわれの目を引くのは、「日本の対応の非一貫性」である。相手国により、また事例により、日本政府の賠償に対する反応は大きく異つてゐる。

このやうな特徴および変化の背景としては、まづ、日本人の海外進出の方向が限定されてきたことが挙げられる。当時、アメリカやカナダでは、日本人移民の受容れを制限する政策を採りつつあり、それがこの方面における賠償事例の減少につながつた。また中国における内政の混乱は、同国内での賠償事件の続発に結びついた。さらに「日本の対応の非一貫性」については、賠償問題に対する輿論の影響力が増大してきたことや、対外政策における賠償問題の副次的性格がこの時期に明かになつてきたことが、その背景として考へられる。

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2.論文の目次

(1)

(2)

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正誤表・補足情報

いまのところ誤記や誤植は見つかつてゐません。なにかお気づきの点がありましたら、ご一報いただけると幸です。

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入手・閲覧方法

次項「全文データ」から、PDFファイルを閲覧・印刷できます。また紙媒体については、各地の図書館(大学図書館・公共図書館)で閲覧できます。下記のリンク先から検索してみてください。

全文データ

本稿は私が、国立国会図書館調査立法考査局における職務の一環として、国会審議の参考に供するために執筆したものです。国立国会図書館の許諾を受けこちらに転載しますが、著作権は同館に帰属します。無断転載・複製による第三者への配布・内容の改変を禁じます。

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参考文献リスト

(現在作成中です)

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